使用人「・・いやぁ~やばいよやばいよぉ・・どうしよぉぉぉ💦・・はぁぁぁ・・」
女将「・・はぁ?・・なに?・・」
支配人「・・にゃんにゃんよぉ・・って・・聞かにゃいほうが身のためにゃ・・」
使用人「・・いやぁ~まずいぞまずいぞぉぉぉ💦・・こりゃ非常にまずいぞぉぉぉ💦・・」
女将「・・ふん・・ほっといた方が良さそうね・・」
ここ香坂に店を立ち上げてから早3年・・ようやく煮詰めてきていたものが形になりだしてきた・・東京の頃から数えれば約5年か・・きっかけはコロナの影響で営業できない居酒屋を稼働させるためにやり始めた・・5年前の都内はどこの飲食店も営業制限をかけられ火の車・・少しでも売り上げの足しになればと・・手を変え品を変えこぞって店先でテイクアウト商品を販売していた光景を思い出す・・そう・・お弁当の世界のお話である・・当時の私はコロナで営業できないのをいいことに暫く遊び惚けていた・・ここぞとばかりに海釣りにのめり込み時間をこれでもかと無駄に浪費していた・・だが・・見通しすらつかない緊急事態宣言の延長につぐ延長戦に半年ほどで遊びにも飽き始める・・

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女将「・・なぁにぃ?・・コロナってぇ?・・」
支配人「・・にゃっ!・・これだから秋田犬はぁ・・ウィルスにゃぁ女将ぃ・・たくさんの人間が死んだにゃぁ・・」
女将「・・てめぇ・・たった今・・全国の秋田犬を敵に廻したからな・・」
使用人「・・いやぁ~たくさんの方が亡くなりましたねぇ・・わたしが一番悲しかったのは志村けんさん・・はぁ~だっふんだっ!・・」
とはいえ私も弁当のべの字も知らない飲み屋のマスター・・オードブルや焼き鳥やおでんのお持ち帰りは開店当初から行っていたが・・お弁当という小宇宙には無縁のツマミバカだったといえる・・当時のメニューを思い返してもシメの食事のラインナップは乏しかった気がする・・いわゆる酒飲みの気持ちサイドに極端に寄っている感じ・・酒の肴は得意だがゴハンのオカズにはポカンとしていた・・このまま作れば否応なしに飲み屋のマスターの気まぐれ弁当の仲間入り・・そこでお弁当という小宇宙を模索する・・安価な似たような店先の冷たい弁当をいくらこしらえた所で伸びしろは明らか・・信念に背いた冷凍食品や出来合いの食材は使わない・・だったらそれなりにいいブランドの食材を使いいちから手作りする・・自分が普段の昼食で出せる弁当代はいくらか・・などを考慮し1000円の折重を軸に店舗販売を始めた・・1000円の小宇宙・・弁当箱にもこだわり箱代だけで100円がのしかかる・・いったい原価はいくらになっちゃうのよ・・なんて夜な夜な計算していると食材によっては600円を超えているモノすらあった・・1000円の弁当を1個売って300円の利益・・目玉も飛び出る原価率70パーセントに白目をむきながら得体のしれない小宇宙にのめり込んでゆく・・当時の私は何が何でも温かい弁当の提供に異様なこだわりを見せていた・・だがお客様はそんなことを余り求めていなかったような気がする・・それもそのはずで店舗で購入してすぐ食べる以外は冷めてしまうのだから無駄な一方通行だった気がする・・朝5時から作り始め10時までに20個仕上げる・・これが独りで5時から作れる限界だった・・無論1000円の弁当が思うように売れない日も多く・・余った弁当を近所のショッピングモールに持ち込み委託販売してもらったりと悩ましい店舗販売ではあった・・今思えば・・この店舗販売はある意味必要なかったように思える・・これはこうじゃない・・これは必要ない事・・と反面教師のように仕出し部門の足を引っ張っていた店舗販売だったが・・この時に学んだ教訓経験値は計り知れない・・そう・・真の狙いは仕出しの受注生産にあるからだ・・広告宣伝費すらケチり売れるか売れないか解らない1000円の弁当を毎日作り続けるのは居酒屋との兼ね合い営業もあり当時はヘトヘトになっていた・・この修行は長くは続かない・・なんて言い訳まじりにこの物件にたどり着き移転となるわけだが・・この店舗販売の教訓がまさかの真の狙いへと導き出す・・
女将「・・なんなのよ・・教訓とか・・真の狙いとか・・ただの弁当だろぉwww・・」
支配人「・・値打ちつけすぎにゃwww・・」
使用人「・・いやぁ~あのサイクルの歯車から外れたかっただけかも知れませんねぇ・・」
コチラに来てからは予約販売のみの受注生産に切り替えたわけだが・・無論広告宣伝費はケチる主義続行・・今度は家賃も人件費もないので気長に都合よく口コミ拡散希望の網を張り待ち続けた・・幼稚園や学校や企業などから受注を頂きながら徐々にではあるが手ごたえを感じ始めていた矢先・・とうとう真の狙いからお話を頂く・・仕出しをやるなら絶対に外せないお得意様・・そう・・葬儀屋さんである・・村のお客様からのご依頼内容でも不動の高単価を叩き出すご法事の仕出し弁当・・やはり特別な日の特別な料理としてご利用して頂くのが宅配仕出しの醍醐味かつ真の狙いなのだ・・この契約が取れれば・・という思いで仕出し部門を頑張ってきただけに・・この契約には心底心が震えた・・
女将「・・はぁ?・・ただのケチじゃないのかい?・・」
支配人「・・アホにゃ・・さっさと宣伝しろにゃあヨシダぁ・・」
使用人「・・いやぁ~嬉しい限りですねぇ・・期待に背かないように頑張らないとぉ・・」
葬儀屋さんが求める仕出しのコンセプトとして料理屋にお願いしたいというお話を伺った・・まさにウチにもってこいの依頼内容に涎を垂らしながら伺うと・・コチラはお寺で葬儀を取り仕切るタイプの葬儀屋さんで・・いわゆる街のセレモニーホールタイプとは異なり原点回帰型檀家密着仕様の葬儀屋さんであった・・つまりいろいろな場所のお寺に届けてほしいという依頼内容に・・まさにウチにもってこいではないかと心を躍らせていた・・グラスや食器の貸し出しからアルコールドリンクに至るまでお任せしたいとの内容に料理屋に依頼したいという意図がなるほど理解できた・・
女将「・・えっ?・・お酒まで買ってくれるのぉ?・・あらやだ・・」
支配人「・・絶対に契約とるにゃぁぁぁヨシダァァァァァ!・・」
使用人「・・いやぁ~まさにウチにもってこい!・・桔梗の至れり尽くせりを御見せ致しましょう^^・・」
お話を頂き・・忘れかけ日常を過ごしていた10月に念願の初依頼が舞い込む・・俄然張り切る心にしくじれないプレッシャーが織り交ざり・・けたたましく鳴る前の目覚ましを止め颯爽とキッチンへ向かう・・あの5年前の疲弊しきった朝を思いだしてはほくそ笑み・・あの努力は決して無駄ではなかったと己に言い聞かせ・・すこぶる穏やかな心で出汁巻きを巻いてゆく・・仕出しは配達の時間が決まっているだけに逆算して調理を進めてゆくのだが・・どんなに時間貯金を積み重ねていても盛り付けという緻密でデリケートな工程が容赦なく時を奪う・・この盛り付けだけはどんなに急いでいてもショートカット厳禁の最終コーナーなのだ・・焦らずに急ぐ・・焦らずに急ぐ・・この最終コーナーでコケれば全てが台無し・・お弁当の蓋を開けた時のお客様の笑顔を思い浮かべ細心の集中力で詰め込んでゆく・・時計をこれでもかとチラ見しながらなんとか間に合いお届け完了・・心地よい充実した疲労感と共に帰宅すると・・携帯電話に残る葬儀屋さんからの着信履歴・・立て続けに入っている履歴に不安が募りだす・・慌てて返信するが話し中のようだ・・自問自答するように落ち度がなかったか足りないオツムがフル回転・・が・・思い当たる節がない・・完璧だった・・完璧だった・・そう何度も確認しながら湯船に浸かり見上げる天井に浮かび上がるひとすじの落ち度・・鈍い痛みが心の中でズシンと音を立て襲い掛かる・・やってしまった・・
使用人「・・いやぁ~やばいよやばいよぉ・・どぉぉしよぉぉぉ💦・・」
女将「・・はぁ?・・なにぃ?・・」
支配人「・・にゃんにゃんよぉ?・・って聞かにゃいほうが身のためにゃ・・」
使用人「・・いやぁ~まずいぞまずいぞぉぉぉ💦・・こりゃ非常にまずいぞぉぉぉ💦・・」
女将「・・ふん・・ほっといた方が良さそうねぇ・・」
使用人「・・どうしよぉぉぉ・・電話もつながらない・・はぁぁあヤバいなこりゃ・・終わったかな・・」
やってしまった・・とにかく・・やらかしてしまったことを今さら嘆いてみても鬱陶しい小言しか出てこない・・だがせっかくもらったチャンスをこんな形で・・こんな忘れ形見でと言わんばかりにドリンクの冷蔵庫をあわよくばの期待を込め開く・・間違いない・・注文頂いていた日本酒が5本・・無慈悲にも堂々と鎮座していた・・
使用人「・・ヤバいですよこれはぁ・・非常にヤバいです💦・・」
女将「・・うるさいねぇ・・落ち付きなさいよぉ小者がぁぁ・・」
支配人「・・にゃははは・・イカれたにゃ・・ヤバいしか言わにゃくにゃったにゃwww・・」
本日のご葬儀にはドリンクのご注文と共にグラスとお猪口も提供している・・そう・・故人の献杯用のお猪口を人数分持って行っているのだ・・葬儀屋さんはかなり長い打合せなのか御預け無情の話中・・
使用人「・・ヤバいですよぉ・・いったいこのお猪口は・・なんの為に使うんだい?・・なんてぇ嫌味がまことしやかに現場では飛び交っているかもしれませんよぉぉぉ💦・・はぁ~ヤバいですよぉぉ・・」
女将「・・小者よ・・いいから少し黙れっ!・・ていうか・・なぁにぃ?・・献杯ってぇ?・・」
支配人「・・にゃ~~~~っwww・・これだからにゃぁwww・・にゃが野の秋田犬はぁぁ・・にゃははは・・お粗末片腹痛いわぁwww・・」
女将「・・ふん・・ボキィ・・ボキィボキィ・・規模を限定したところでオマエの行き先はとっくに決まってるけどな・・」
使用人「・・ヤバい・・ヤバい・・せっかくの故人を偲ぶ会の・・口火をシラケさせる献杯の・・中身を忘れるぅ?など言語道断ですよぉ・・はぁ~どうし・・プルルルル・・プルルルル・・あっ!・・」
日頃の行い・・よく・・日頃の行いが悪いからそうなるんじゃぁ!・・などと都合よく唱える人間社会だが・・積み重ねてきた50年以上の業はそう簡単には成算できない・・小さなことからコツコツと徳を積み重ね・・積み重ね積み重ね・・どうにかどうにか死ぬまでに返せればと繰り返してきた業の返済作業・・どういう風に生きるかは自分次第の世の中だが・・亡くなった後の献杯作業の予想までは流石の神でも億劫といえる・・だが・・現世ではそんな甘えは通用しないのが世の常・・チャンスは一度きり・・そんな方程式を覆す葬儀屋さんからの電話に思わず天を仰ぐ・・
葬儀屋「・・あっ・・おつかれさまですぅ・・本日はどうもありがとうございました・・お弁当・・大変好評でした・・住職さんや喪主の方からも大絶賛いただきました^^・・ありがとうございました!・・」
使用人「・・あっ・・あの・・大変申し訳ありませんでした・・にっ・・日本酒ぅ・・忘れてしまいました💦・・」
葬儀屋「・・あ~・・わたしもたしか・・頼んだよなぁ?・・・・なんて思いながらお電話しました・・」
使用人「・・本当に申し訳ありませんっ💦・・だっ・・大丈夫だったんですかぁ・・献杯は?💦💦💦・・」
葬儀屋「・・あ~ぜんぜん・・あまり飲む方がおりませんでしたのでぇ・・みなさんウーロン茶で献杯しましたよ^^・・」
助かった・・暗雲立ち込める空が割れレーザービームの様な後光が降り注ぎ背中の冷たい汗が引いてゆく・・あ~神様仏様葬儀屋様・・まさかのミラクルで事無きを得た小者は180度態度が豹変する・・
使用人「・・いやぁ~助かりましたよぉ~女将ぃ・・やっぱり神様はぁ見てるんですねぇ~支配人っ!・・はぁ~良かった良かった・・あっ・・アイスでも食べますぅぅぅ^^・・あっ・・ケーキのほうがいいですかぁ?^^・・」
女将「・・手の平返すねぇぇwww・・そういうトコも小者感満載だけどなwww・・」
支配人「・・アホにゃwww・・さぁ~いくらもいかない小者ばにゃしはこの位にして行きますにゃっ!・・今回のゲスカリはぁぁ~この方💖・・」

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使用人「・・いやぁ~可愛いですねぇぇぇ💖・・ピンクのお鼻がとってもキュートなオモチちゃん💖・・たまりませんねぇぇ・・」
支配人「・・オイラ・・オモチちゃんとは仲良くなれそうにゃ・・」
使用人「・・いやぁ~驚きましたよぉぉ・・めずらしく支配人がワンコに緊張しませんでしたねぇぇ^^・・」
伺えばオモチちゃん・・なんと与論島からお迎えした保護犬とのこと・・そこで・・少し調べてみると・・なんと与論犬という犬種があるではないか・・特定の血統品種ではないらしいのだが与論島には沢山の野良犬がいるらしく保護活動の歴史も古いようだ・・小型から中型と見た目も様々で多種多様な血統が混じっている子が多い・・しかしなぜか共通点はその毛色・・オモチちゃんのように白地に茶が混じるパターンが与論犬の最大の特徴ではないかと思う・・オモチちゃんも4~5歳ごろから急に茶色が浮き出て来たとの事だった・・
使用人「・・いやぁ~可愛いなぁ与論犬💖・・オモチちゃん・・いいオウチに引き取られて良かったね^^・・」
女将「・・オモチちゃんビックリさせちゃってごめんねぇ💖・・」
支配人「・・オモチちゃんまた来てにゃぁぁぁ💖・・」