「・・ヨシダさぁぁ~ん・・いるぅ~?・・ヨシダさぁぁ~ん・・」
刹那な夕暮れ時にビビりながら・・急ぎ足で女将といつものように散歩を済ませる・・戸締りをしながら支配人が戻っていない事にウッスラと気付く・・これで6日目・・家出旅新記録樹立なのだが流石に寂しくなってくる無言の女将と私・・根っからのビビり気質な支配人だけに危険な事には近づかないと思うが・・何が起きても不思議じゃないのが山の掟・・嫌なビジョンを誤魔化すようにキッチンで夕食の準備をしていると・・真っ暗になった勝手口の外から聞きなれた声がした・・S師匠だ・・普通ではない来訪時間に火を止めながら時計をチラ見する・・19時・・この時期この時間に人が訪ねてくるのは珍しい・・何事かと慌てて顔を出す・・
S師匠「・・ヨシダさぁん・・ヨイチ君帰ってきましたかぁ?・・」
一体全体この問いかけは・・良い知らせなのか・・それとも・・こんな時間にわざわざ訪ねて来てくれるという事は最悪のシナリオなのかとドギマギしながら答える私・・
使用人「・・あっ・・まだ帰ってないです・・なんかありましたかぁ?・・」
s師匠「・・さっき・・帰ってくるときにダムの所でヨイチ君見たよぉ・・たぶんヨイチ君・・」
使用人「・・へっ?・・生きてましたかぁ?・・」
なにやら伺えば・・道の側溝をのぞき込んでいる所を目撃したとの事・・動物の生態に明るいs師匠いわく・・
s師匠「・・生きてる生きてるwww・・たぶんこっちに帰ってくる途中だと思うねぇ・・いちおう念のためwww・・」
そう笑いながら引き上げてゆく師匠に感謝を伝え安堵する・・宿から香坂ダムまで1キロ強といったところか・・チンタラ帰ってきても小一時間・・毎回家出旅の帰り際の顔が楽しみで寅さんのように期待してしまう・・案の定ニヤニヤ想像しながら晩酌を続けていると・・
支配人「・・ぅぅ~さみぃぃぃ~・・腹減ったぁぁ~・・」
すっとぼけたように支配人ゲートから飛び込んできた支配人ヨイチ・・私は女将に目配せを送り支配人をもみくちゃにする・・身体中に雑草の種を身にまとい・・目ヤニだらけのツラを・・サヨナラホームランを打ったバッターのようにもみくちゃにしてゆく・・
女将「・・テメェ・・このヤロォ・・何日サボりゃぁ気が済むんだい!・・新記録とか更新してんじゃねぇよ!・・」
使用人「・・へっぇぇ・・なんですかぁ!・・これぇっ!・・種だらけじゃないですかぁ!・・」
べっとりと纏わりつく晩秋の種達を拭い取りながら・・これでもかともみくちゃにしてゆく・・前情報を頂いていただけに準備万端でもみくちゃにしてゆく・・女将の前歯で猛烈なガジガジ攻撃を受ける最中・・怪我がないか身体中を触診・・どうやら種もみをまとっている以外かすり傷すらなさそうで安堵する・・
使用人「・・ったく何処まで遠征してたんですかぁ?・・私はてっきりぃ・・人様のお家で甘やかされていると思っておりましたよぉ・・」
支配人「・・見損にゃってもらっちゃぁ~困るにゃ・・パトロールも楽じゃにゃいにゃ・・」
女将「・・ふん・・ものは云いようね・・差し詰めぇ・・遊んでるうちに知らない所まで行っちまってぇ・・戻れなくなってウロウロ山をさ迷ってたってとこだろぅwww・・」
香坂ダムを通ってきたという事は・・さらに下まで降りたか・・ダムの反対側の山で遊んでいたのか・・師匠いわく・・猫はいい狩場を見つけるとしばらくそこに居ついたりするらしい・・とはいえ氷点下の夜を山でハンティング・・昼間に日向ぼっこでもして過ごしていたのだろうか・・か弱き現代社会のヒューマンにはとても真似のできない芸当家出旅といえよう・・
支配人「・・ロマンにゃ・・男は旅に出てにゃんぼにゃ・・旅猫ロマンにゃ・・はぁ~疲れた・・飯食って寝よ・・」
女将「・・さっ・・いくらもいかないみやげ話はそのくらいにしてぇ・・行きまぁ~す!・・今回のゲスカリはぁ~・・この方達❤・・」
支配人「・・でたにゃ!・・ヨシダ一族にゃwww・・」
使用人「・・いやぁ~今回は手前味噌で申し訳ございません・・今年も来てくれました・・吉田家3世代の再登場でございます・・」
女将「・・ばあちゃん元気そうじゃないのさぁ・・せんべぇ沢山貰っちゃったわよぉwww・・」
毎年恒例化しつつある吉田家の3世代親子旅・・筆頭ヨシ・・娘ミナ(姉)・・孫のミオ(娘)3人による女3世代構成でお届け・・今回はなんとわたくしの娘ミオの運転する車で香坂まで来て頂いた・・到着早々女将を連れてみんなでお散歩・・いきなりポケットからせんべぇを取り出し与えまくるヨシと貰いまくる女将・・ふだん食べれないおやつにヨダレ全快で喰いまくる女将・・しかし・・このあと・・まさかのハプニングが・・宿までもう少しというところで・・ゆっくりと・・しゃがみ込むように倒れるヨシに・・慌てて支える孫のミオ・・何が起きたのかと慌てて駆け寄ると・・
ヨシ「・・まぁた・・転んじゃったぁ~・・」
と力なき言葉がヨシから発せられた・・えっ?・・今の転んだの?・・と思うほどゆっくりと・・スローモーションのような動作に脳梗塞でも起こしたのかと不安がよぎる・・がどうやら大事には至らずに済んでホッとしながら宿まで戻ると・・
支配人「・・にゃはははは・・ばぁちゃん種だらけにゃwww・・」
女将「・・お前が言うなやwww・・」
転んだ時に石垣の茂みに突入したヨシ・・ニットやフリース素材が仇となり種もみだらけの彼女を種もみだらけだった支配人と必死にクリーンアップする・・とはいえこの程度で済んだ事に心底安堵する・・怪我がケガなら到着即Uターンもありえたのだから無事で何よりである・・
なんとか夕食もクリアー・・お楽しみのカラオケまでたどり着き感謝する・・若いころの私は半端な事ばかりをやり多大な迷惑ばかりかけてきた・・母も年を重ね旅行などからも無縁となっている日々の生活に少しでも恩返しができればと思っている・・
女将「・・次の日・・爆買いツアーに行ったんだろぅ?・・」
使用人「・・あっそうそうwww・・佐久市内にある赤坂直売所さんで爆買い・・そのあと信州が誇るスーパーツルヤさんで爆買いと・・娘の車満載でお見送りしましたよwww・・」
支配人「・・ばぁちゃん元気でにゃ~~~~❤・・また来年にゃ~~~~❤・・」