女将「・・ちょっとぉ・・なぁに・・そっちで・・独りで楽しそうに遊んでるのさ・・アタイもそっち・・連れて行きなさいよぉ・・」
標高800mの香坂・・5月終盤までは遅霜に注意しなければいけないと・・畑の師匠達は口をそろえて言う・・6月に入り・・ここ香坂でもあちこちで本格的に畑が始まる・・宿の西隣りにK師匠の畑・・そのまた西隣りにウチの畑がある・・宿からもみえるので畑で作業をしていると女将がうるさいのだ・・そっちへ連れて行けと・・これをシカトしていると・・手当たり次第に破壊活動が始まる・・庭木の枝は折られ・・小屋の毛布は引き裂かれる・・挙句の果てに昨年は・・何が何でも来ようとして・・柵を無理矢理パワーですり抜け・・妙な体制に陥り・・身動きできなくなりパニック発動・・ただ事ではない声に駆けつけて見れば・・ひとりで石垣から落っこちそうになり・・あやうく首つり状態になっていた・・今年は問題点を改善し・・破壊されるものも無くした・・女将自身も少しは成長したのか・・ヒ~ヒ~鳴くがうるさいどまりで収まっている・・
使用人「・・べつに畑に連れてくるのは構わないんですよぉ~・・でもね・・日影がないんですよぉ~・・ジッとしてられないんですよ・・無理ですよねぇ?」
女将「・・・えっ・・?・・日影・・ないの・・?・・?・・」
使用人「・・えぇ・・はたけ・・ですから・・」
そんな女将の事を考えて・・桜の木を何本か植えた・・うまく成長すれば居場所ができるはずだ・・香坂の成長スピードだと5~6年はかかるかもしれないが・・
使用人「・・あ~いたたっ!・・う~っ・・いててっ・・」
支配人「・・にゃははははは~~~っ・・にゃにそれ?・・ヨシダぁ~・・小刻みに動くジジイみたいにゃww・・」
久し振りに振るクワ仕事に身体が敏感に反応する・・腰と腕がパンパンだ・・なまった体にムチを入れんばかりにクワを振るう・・昨年の教訓を活かし・・今年はマルチ張りにチャレンジだ・・家庭菜園や畑をされている方はご存知かと思うが・・マルチとは・・簡単に言うと作物の地周りを覆うビニールのカバーだ・・これを仕掛けておくと保水や保温・・それに厄介な雑草の進軍をある程度防いでくれる・・まず作物を植えるウネを作ってゆく・・畑の広さ的には・・25メートルプールといったところか・・昨年の教訓そのⅠ・・プランを明確にたてるという事・・植えるモノ・・植える場所・・特に連作障害は注意しろと師匠から教わった・・去年と同じ場所に同じモノを植えないようにする・・それさえ決まればあとは夢中でクワを振るうのみ・・こぉ~んな感じで張ってゆく・・
ウネづくりが難しい・・基本的にもっと土を盛らないといけない・・あとウネがキタナイ・・平らに均等にならすのがヘタで雑だ・・また師匠達に笑われる事だろう・・そして昨年の教訓その2・・草刈りだ・・昨年は宿の立ち上げも重なり思うように畑に割ける時間が無かった・・そのため何度も草刈りで無駄に体力と時間を削らされた・・今年は少しでも時短になればとマルチにかけた・・そんなマルチだが・・マルチなメリットばかりではない・・もちろんデメリットととして畑が終わる12月にはがさなければならない・・イメージとしては・・ビニールを思いっきり引っ張れば簡単にはがれそうだが・・ひと夏・・ひと秋を超えた土は固く締まり・・あざ笑うかのようにビニールが引きちぎれる・・埋まっている個所を残して・・まぁこれはこれで大変なのだが・・真夏の炎天下の草刈りを考えれば楽である・・そして綺麗になった畑に藁をまき耕運機でかき回してもらい冬を越す・・
使用人「・・ふぅ~・・これでよしと・・全面張るのに2日か・・甘くないなぁぁ・・あら?・・支配人・・」
ひと仕事終えた夕暮れ時・・張り終えたマルチを満足気に眺めていると・・遊び帰りの支配人がひやかしがてら通りかかる・・
支配人「・・土遊びは終わったにゃ?ww・・じゃぁ一緒に帰るにゃ・・」
使用人「・・ですねぇ・・御意❤・・」
今年の畑は楽しみだ・・